ストックオプションの「1%」は、3回の調達で0.63%に薄まる:創業者でも16%まで減る持ち分の話

転職先で提示された「ストックオプション1%」は、上場のころいくらになるのか。創業者でも持ち分は16%まで減る。薄まり方を計算し、手取りの目安と、入社前に聞くべき質問をまとめた。

5th Nov 2026
奥へ並ぶ4枚の円盤の、光るくさび形が手前から奥へ細くなっていく概念図

転職先で提示された「ストックオプション1%」は、上場のころいくらになるのか。創業者でも持ち分は16%まで減る。薄まり方を計算し、手取りの目安と、入社前に聞くべき質問をまとめた。

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本稿の金額は公開データを組み合わせた計算例で、特定の会社の数字ではありません。持ち分の薄まりのデータは米国中心のCartaのもので、日本の会社には当てはまらないこともあります。税金の説明は一般的な内容で、個別の判断は税理士にご確認ください。確認時点は2026年10月31日(アジア時間)です。

スタートアップの内定で「ストックオプションを1%出します」と言われたら、上場のころ、その1%はいくらになっているのか。

先に答えを書くと、上場までに資金調達が3回あれば、持ち分は0.63%くらいまで減る計算になる。Cartaの中央値を使った例で、回数も売る割合も会社ごとに違う。ただ、薄まること自体は創業者ですら例外ではない。米国のCartaの調査では、創業チームの持ち分は中央値でシード後に56%、シリーズA後に36%、シリーズC後には16.1%まで減る。

それでも、薄まること自体は悪い話ではない。この記事では計算の中身と、手取りの目安、入社前に聞いておきたい質問をまとめる。

前回のラーメン店の計算で「途中で株主が増えて、持ち分が2割薄まる」と書いた。あの1行を、働く人の目線で開いてみたのが今回だ。

ピザの切れ端は細くなる。でもピザは大きくなる

会社の株を1枚のピザだとする。

会社が資金を調達するたびに、新しい株主のぶんのピースが増える。自分の切れ端の大きさは変わらないが、全体に占める割合は小さくなる。これが「薄まる」ということだ。

どれくらい薄まるのか。Cartaの2026年4〜6月期の中央値では、1回の調達で売る割合はシリーズAで18.7%、シリーズBで13.4%だった。シリーズCは同じ粒度の数字が見つからなかったので、2025年12月のソフトウェア企業の中央値である10%を仮に置く。

順番に掛けるだけなので、電卓で足りる。

時点その回で新しい株主が持つ割合あなたの持ち分
入社時──1.00%
シリーズAのあと18.7%0.81%
シリーズBのあと13.4%0.70%
シリーズCのあと10%0.63%

入社時の1%が、シリーズA・B・Cのあとに0.81%、0.70%、0.63%になる棒グラフ

創業者の数字を見ると、これが特別な話ではないと分かる。

創業チームの持ち分の中央値。シード後56%、シリーズA後36%、シリーズC後16.1%の棒グラフ

シリーズCの時点では、従業員向けの枠(16.8%)が創業者の持ち分(16.1%)を上回る。会社を作った人の持ち分より、働く人のために取ってある枠のほうが大きい。私はこの数字を見て、少し見方が変わった。

では、薄まると損なのか。

そうとは限らない。持ち分が減っても、会社の値段がそれ以上に上がれば、切れ端の金額は増える。入社時に会社の値段が10億円だったとする。1%は1,000万円ぶんだ。上場時に113億円になっていれば、0.63%は約7,160万円になる。割合は4割近く減ったのに、金額は7倍になっている。

113億円は適当に置いた数字ではない。INITIALによると、2025年上半期に上場したスタートアップの初値時価総額の中央値だ。

大きさの違う3本の筒に同じ割合の液体が入り、上から管で足されている概念図

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手取りはいくらになるのか

ここが一番知りたいところだと思う。

ストックオプションは、決まった値段で株を買える権利だ。入社時の会社の値段が10億円なら、1%ぶんを1,000万円で買える権利と考えると分かりやすい。上場後にその株を売ると、差額が利益になる。

税制適格という条件を満たすストックオプションなら、買う時点では税金がかからず、売ったときの利益に約20%(20.315%)がかかる。国税庁の説明する株式の税率と同じだ。条件を満たさない場合は、買う時点で給与などとして課税されるのが一般的で、手取りはかなり減る。

同じ前提(入社時10億円、上場時113億円、3回の調達)で計算すると、こうなる。

入社時にもらった割合上場時の持ち分上場時の価値買うのに要るお金税引き後の手取り
0.1%0.063%716万円100万円約490万円
0.5%0.317%3,580万円500万円約2,450万円
1%0.634%7,160万円1,000万円約4,910万円

入社時にもらった割合ごとの、税引き後の手取りの目安の棒グラフ。0.1%で約490万円、1%で約4,910万円

「1%」はかなり大きい数字だと考えたほうがいい。新規上場企業のストックオプションの比率は、会社全体で中央値9.4%(2022年)という調査がある。これを全員で分けるので、普通の社員がもらう割合はもっと小さい。Money Forwardの解説は、一般社員なら年収の0.5〜1倍くらいになる設計を目安に挙げている。年収600万円なら300〜600万円で、上の表の0.1%の行に近い。

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計算どおりにならない理由

ここまでは、うまくいったときの話だ。正直に、そうならない理由も書いておく。

上場しない会社のほうがずっと多い。 INITIALによれば、2026年上半期に上場したスタートアップは14社だった。同じ半年に資金を調達した会社は、STARTUP DBの集計で1,061社。集計元が違うので単純な比率にはできないが、桁が2つ違う。上場しなければ、ストックオプションは紙のままで終わることが多い。

退職すると使えなくなることがある。 権利を使える時期が「入社から何年後」と決まっていたり、辞めると失効したりする契約がある。ここは会社ごとに違う。

上場してもすぐ売れるとは限らない。 一定期間は売れない決まりがあることも多く、その間に株価が下がることもある。上の表の113億円は初値の中央値で、その値段で売れる保証はない。

薄まり方は会社で違う。 今年の大型調達では、ElevenLabsは5億ドルの調達で4.5%、Harveyは2億ドルで1.8%、Valar Atomicsは10億ドルで16.7%(いずれも調達額÷評価額)だった。値段が高い会社ほど、1回で薄まる割合は小さい。入社が遅ければ残りの調達は少なくなるし、4回以上になる会社もある。0.63%は3回の場合の例でしかない。

だからストックオプションは、給料の代わりにはならないと私は思っている。年収を下げてまで入るなら、ゼロになっても生活が回るかどうかを先に確かめたほうがいい。短期でまとまったお金が必要な人には向かない。

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入社前に聞いておきたいこと

「1%」と言われたときに、確かめておきたいことがある。聞きにくく感じるかもしれないが、ちゃんとした会社なら答えてくれるはずだ。

聞くことなぜ聞くのか
全株式に対して何%か(予定の枠も含めて)「○株」だけでは多いのか少ないのか分からない
権利を使うときの1株の値段(行使価格)手取りはこの値段との差で決まる
いつから使えるか(ベスティング)「4年かけて少しずつ」のような条件があることが多い
辞めたらどうなるか失効するのか、使える期間が残るのか
税制適格か税金のかかり方と、手取りが大きく変わる
今の評価額と、次の調達の予定値段の出発点と、どれくらい薄まりそうかが分かる

税制適格には、1年に権利を使える金額の上限もある。もともと1,200万円で、2024年4月以降に付与された分は、会社の設立年数によって最大3,600万円まで広がった。上の表の1%でも1,000万円なので普通は収まるが、大きく付与される人は確かめておきたい。

自分の条件で計算したくなったら、前回の計算機で会社の値段の感覚をつかんでから、上の表の掛け算をなぞってみてほしい。

書いていて思ったのは、「1%」という言葉の強さだ。割合は分かりやすいけれど、それだけでは何も決まらない。分母がどう変わるのかまで聞いて、初めて金額の話になる。

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参考資料


次号の記事案

  • 案1:円安で増えて見えるだけかもしれない — 自分で作った資産管理のスプレッドシートが、気づかないうちに間違う場所を確かめる。
  • 案2:上場した途端に値段が下がるのはなぜか — 未公開のときの評価額と、上場後の株価の差を、公開情報で読み解く。
  • 案3:スタートアップに転職する前に見る5つの数字 — 残りの資金、売上の伸び、調達の間隔など、外からでも確かめられる数字を並べる。

本稿は投資助言や税務の助言ではありません。記載した企業の有価証券を筆者が保有している可能性があります。作成には生成AIを利用しています。投資判断の前に免責事項をご確認ください。

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